カルシウム、リン代謝異常症
当研究室ではFGF23関連疾患、低ホスファターゼ症やビタミンD欠乏症/依存症、骨形成不全症などの主に研究対象としている疾患群以外にも、副甲状腺ホルモン(PTH)や副甲状腺ホルモン関連タンパク(PTHrP)などの異常を含むカルシウム、リン代謝異常症(高カルシウム血症、低カルシウム血症、高リン血症、低リン血症)の鑑別診断、治療をより専門的な立場で行っています。
非常に稀な疾患も含めますとカルシウム、リン代謝異常症の鑑別診断は非常に多岐に渡ります。従って正確な鑑別診断を行うためには頭に思い浮かんだ疾患のみを鑑別するのではなく、必ず鑑別診断用のフローチャートをご使用ください(図1-3)。カルシウム、リン代謝異常症の鑑別診断には、がんなどの重大な疾患や、原疾患の治療によりQOLや予後の改善の見込める疾患を多く含んでいます。カルシウム、リン代謝異常症に遭遇した場合にはそのような疾患の見逃しを避けるために、煩わしいようでもフローチャートを毎回確認して頂ければと存じます。
高カルシウム血症(図1)、低カルシウム血症(図2)、くる病・骨軟化症(慢性低リン血症を含む)(図3)の鑑別診断フローチャートを添付しますのでご参照ください。
血清リン濃度は食後だと一過性に血中のリンが細胞内に移行することで低下することがあります。慢性低リン血症の診断には以下の基準を推奨しています。
①食前で2回の低リン血症(施設の基準値未満)
②食前で1回の低リン血症+骨型アルカリホスファターゼ高値
①②のいずれかを満たす。
(高リン血症の鑑別診断は腎不全(CKDG3b~)、PTH作用不全(特発性副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症)、先端巨大症、非常に稀な常染色体劣性遺伝形式の先天性低FGF23血症(FGF23遺伝子異常、GALNT3遺伝子異常、KLOTHO遺伝子異常)などが含まれますが、実臨床的に鑑別が重要となる症例が少ないので割愛いたしました)。
添付のフローチャートをご参照頂いた上で、鑑別が困難な症例や遺伝子診断などの特殊な検査が必要な症例がございましたらご相談ください。遺伝子診断に関しては我々で作成した低リン血症と低カルシウム血症の一部、高カルシウム血症の中のJansen症候群は遺伝性骨粗鬆症遺伝子診断パネル③(低リン血症性くる病・骨軟化症パネル)、高カルシウム血症の家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症と原発性副甲状腺機能亢進症の中の家族性のものは遺伝性骨粗鬆症遺伝子診断パネル④(遺伝性副甲状腺機能亢進症)に含まれています(表1)。