2024年6月20日
当研究室大学院3年の木村聡一郎先生が、当院で手術を行った転子下骨折(非定型骨折)38例の臨床像をまとめた論文がOsteoporosis Internationalにアクセプトされました!
非定型骨折はビスホスホネートやデノスマブなどの長期使用や、中等量以上のグルココルチコイドの長期使用との関連が有名ですが、我々の研究室では肋骨や骨盤骨、大腿骨頭、大腿骨骨幹、脛骨/腓骨骨幹、踵骨、中足骨などの荷重骨の日常生活動作での非横断性骨折、横断性骨折は通常の骨粗鬆症ではなく、骨吸収抑制薬やグルココルチコイドを含めた骨形成低下によるmicrocrackの集積が原因であり、特に比較的若年者や両側の非定型骨折、遷延治癒などでは低リン血症性骨軟化症や軽症低ホスファターゼ症、軽症大理石骨病、骨形成不全症などが含まれている可能性が高いと予想しておりました。従って本検討は主にはそのような骨代謝疾患や骨系統疾患が非定型骨折にどの程度含まれているのかを後ろ向きに検討するという目的で実施致しました。その結果38例中4例(10.5%)は 骨代謝疾患および骨系統疾患であり、さらに3例は転子下骨折をおこすまでは骨代謝疾患、骨系統疾患が診断されていないという結果でした。
本検討結果を持ちまして、非定型骨折などの骨形成低下に伴う荷重骨の骨折では骨吸収抑制薬やグルココルチコイド使用者も含めて、採血(Ca, Pi, ALP)などでの 骨代謝疾患や骨系統疾患の除外診断が非常に重要であるということを整形外科や内科医にご理解頂けるようになればと願っております。
また一般的に知られている非定型骨折のリスクファクター(グルココルチコイドおよび骨吸収抑制薬)と、年齢の影響を比較したところ、 グルココルチコイドや骨吸収抑制薬(骨転移に対して使用するデノスマブ120mg/月を除く)単独で非定型骨折を惹起する症例は予想以上に少なく、75歳以上の高齢者では単独で非定型骨折を起こすケースが多いことから、骨形成低下だけでなく転倒リスクも含めて高齢(ROCでは79歳以上)という要素が最も高いリスクであることも本検討にて判明いたしました。
デノスマブ120mg/月 の3年以上の使用や、80歳以上の高齢者に対する骨吸収抑制薬の使用に関しても非定型骨折予防という観点で慎重に検討して頂く必要という注意喚起ともなる報告だと思います。
木村先生初の論文アクセプトおめでとうございます!!