2023年7月20日
以前より肺癌や前立腺癌などの悪性腫瘍の進行期でFGF23関連低リン血症性骨軟化症を惹起することを認知しておりました。他の施設からも症例報告で進行期肺癌などで FGF23関連低リン血症性骨軟化症 を惹起することを示した報告が出てきましたが、本病態についてしっかりと病態を考察した論文がありませんでした。
そこで、当研究室助教の加藤創生先生に当科で診療した進行期肺癌に伴うFGF23関連低リン血症性骨軟化症と、これまでの進行期悪性腫瘍に伴うFGF23関連低リン血症性骨軟化症及びその可能性が疑われる(進行期悪性腫瘍+ファンコーニ症候群/慢性低リン血症性骨軟化症)症例報告をまとめて、また本病態をEctopic FGF23 syndromeと命名してLiterature Reviewとして本邦内分泌学会の機関紙Endocrine Journal誌に報告してもらいました。
過去に報告のあったEctopic FGF23 syndrome 症例&疑い症例52例では、前立腺がん26例、肺がん11例、血液がん4例、乳がん3例、卵巣がん2例、胃がん/大腸がん/直腸がん/膵がん/脳腫瘍/甲状腺がんがそれぞれ1例という内訳でした。腫瘍からのFGF23産生を直接確認できている報告が非常に少なく実際のFGF23過剰産生のメカニズムは不明です。ほとんどの症例で転移を認めており肺がん、前立腺がんなどでは異所性ACTH産生、SIADHを合併している症例が多いことが特徴的でした。
後天性のFGF23関連低リン血症性骨軟化症を診断した際には、原因疾患として腫瘍性骨軟化症だけでなくこのような病態もあることに注意して頂ければと思います。今後のEctopic FGF23 Syndromeの更なる病態解明が望まれます。