Excess fibroblast growth factor 23 in alcoholic osteomalacia is derived from the bone.

2025年1月16日

論文

大学院生の日髙尚子先生のアルコール性FGF23関連低リン血症性骨軟化症でのFGF23過剰産生部位に関する論文がアメリカ骨代謝学会のオープンアクセス誌JBMR Plusにアクセプトされました。

この論文は日髙先生が2021年にBone Reports誌に初めて報告した、非常に珍しい飲酒によって後天性にFGF23関連低リン血症性骨軟化症を発症する疾患に関する続報となります。
Induction of FGF23-related hypophosphatemic osteomalacia by alcohol consumption – 東京大学医学部附属病院
飲酒誘発FGF23関連低リン血症性骨軟化症では、総体的に過剰にFGF23を産生している臓器が、通常FGF23を産生している骨細胞ではなくアルコールによる影響の強い肝臓に存在する細胞ではないかという問い合わせを多数いただきました。しかし生理的にFGF23を産生しうる臓器は成熟骨細胞以外に存在しないことをわれわれは長年にわたるFGF23研究を通して熟知しているため、飲酒誘発FGF23関連低リン血症性骨軟化症においての過剰なFGF23産生臓器が成熟骨細胞であることを証明したいと考えておりました。

そこで、コニカミノルタ社が開発した高感度で定量性をもつナノ免疫染色システム: phosphor-integrated dots (PIDs)を利用し本命題の解決を試みました。本検討ではまず変形性関節症で手術をした症例の骨から、骨細胞が産生するFGF23のPID分子量の平均を割り出し、腫瘍性骨軟化症などの骨における成熟骨細胞以外でFGF23が過剰産生されているときに、骨でのFGF23産生が抑制されていることを確認しました。そのうえで 飲酒誘発FGF23関連低リン血症性骨軟化症 の骨生検組織でFGF23 のPID分子量 発現が抑制されていないことを確認したことで、本病態での過剰産生されているFGF23の産生部位が骨の成熟骨細胞であることを示しました!

本検討はFGF23が何らかの理由で過剰産生される場合、腫瘍性骨軟化症におけるFGF23産生腫瘍: Phosphaturic Mesenchymal Tumorや、線維性骨異形成症: Fubrous Dysplasiaの罹患部位以外では、骨の中の成熟骨細胞がその起源である可能性が一般的には高いということを示した生理学的、臨床医学的に重要な知見を示したものだと自負しておりますが、まだ国際的に飲酒誘発FGF23関連低リン血症性骨軟化症の認知度が低いことや、疾患が希少である故に1例のみでしか検討できなかったことなどから、非常に残念ながらよりインパクトの高い雑誌での掲載には至りませんでした。

本検討結果を元に飲酒誘発FGF23関連低リン血症性骨軟化症の啓発が進み、またナノ免疫染色を用いた疾患の病態解析法が確立していくことに期待しています!

日髙先生論文アクセプトおめでとうございます!
地道に実験を遂行して頂いたことに感謝致します!

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