ピロリン酸(PPi)測定開始しました

2021年9月17日

トピック

2021年9月より当研究室でピロリン酸(PPi)測定を開始いたしました。

PPiは下記のような様々な病態に関与することが知られていましたが、これまでに安定した測定系が確立されておらず測定可能な施設も限られていたため、臨床や研究でのデータに非常が乏しい状況が続いておりました。PPi は骨での局所濃度が上昇すると石灰化を抑制することが知られており、また血中濃度の上昇は偽痛風などを含む関節内のピロリン酸結晶産生によるCalcium Pyrophosphate Deposition Disease (CPPD病)のリスクとされています。一方で、PPiの血中濃度が低下すると動脈中膜の石灰化などに影響することが分かっています。

PPi代謝に関して中心となる分子は3つ(ALP、ABCC6、ENPP1)あり、ALP (TNSALP, ALPL)はPPi⇒Pi+Piとリン酸に分解するため、その活性低下では血中PPiが上昇し、ALPの機能低下型変異による低ホスファターゼ症: Hypophosphatasia (HPP)は骨の石灰化不全によるくる病・骨軟化症を惹起し、またCPPD病のリスクとなります。一方でABCC6は細胞内から細胞外へのATPの輸送、ENPP1は細胞膜表面でのATP⇒PPi+AMPの分解を担っているため、ABCC6とENPP1の変異ホモ接合体では血中PPiが低下し血管中膜の著明な石灰化により6か月以内に半数が血流障害で亡くなられる乳児全身性動脈石灰化:Generalized Arterial Calcification of Infancy: GACIを発症します。GACIで乳児期を過ぎて生存された方やGACIを発症しなかった症例で、ENPP1変異ホモ接合体ではFGF23関連低リン血症性くる病・異所性骨化症を中心とした常染色体潜性低リン血症性くる病2型:Autosomal Recessive Hypophosphatemic Rickets/Osteomalacia (ARHR2)、ABCC6変異ホモ接合体では皮下の石灰化を主徴とする弾性線維性仮性黄色腫:Pseudoxantoma Elastica (PXE)を発症します。

臨床でのPPiの上昇や低下が疑われる症例や、臨床研究、基礎研究でのPPi測定をお受けしたいと思います。PPi測定では、採血後に血小板のタンパクからのPPi漏出があるため、採血後1時間以内に当方が指定したタンパク除去フィルターを使用しての遠心処理が必要となりますので、必ず検体採取前にご連絡頂きますようお願い致します。また臨床検体を採取するうえでの倫理申請などについても、必要がございましたら事前にご相談頂けましたら幸いです。ピロリン酸(PPi)測定依頼に関しましては下記、本HPの「お問合せ」フォームよりご連絡ください。(お返事が1週間程度まで遅れることがあるかと思います。ご了承ください)

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